専攻医
SENIOR RESIDENT
ドクターインタービュー

症例数と専門性、
他分野へのアプローチがかなう、
総合病院ならではの強み

副院長/心臓血管外科部長 中村 喜次

01 直接的に「命」にかかわる診療科にひかれた

私が外科を選択した理由は、命をあつかう医師として、どの診療科でも大変な仕事には違いないと覚悟をしていたので、どうせ苦労をするのならやりがいのある外科が良いと思ったからです。どの診療科であれすべての医療は命に関わりますが、外科の中でも心臓外科は、ダイレクトに命の源の心臓をあつかうということに魅力を感じ、心臓外科の世界に入りました。

当院はとくに循環器診療が強みですが、循環器内科と心臓血管外科のバランスは良好で、非常にいい関係を築けています。症例数も多いため、科で取り合うということもないですし、内科治療にするか、外科治療にするか、ということで揉めることもありません。
ハートチームがお互いをリスペクトしながら、関係性を高め合っています。

02 多様な専門分野へのアプローチができる

当院での研修の強みは、症例数が多いことはもちろん、専門病院でなく総合病院であることです。研修においては循環器の専門病院ではなく、症例数が多くある総合病院の方が適していると思っています。他の科の先生と相談しながら得る学びも多いですし、研修を行う医師にとって、さまざまな経験を積むことができる環境です。
症例数が集まる病院というのは、多くは大学病院や循環器専門病院です。当院は症例数が豊富な総合病院でありながら、心臓外科だけでなく他の専門分野にもアプローチができる、数少ない施設の一つです。

03 専門性の高さに特化した研修

心臓血管外科の分野において、すべてを網羅して、自分でなんでも出来る医師になる必要はないと思っています。たとえば私の場合は、ロボット手術やMICS手術が専門です。このように何かを選んで、その領域でトップを目指すような専門性の高い医師を、当院で目指してほしいと思います。
たとえば、私は大動脈のステント治療は出来ないですが、弁膜症や冠動脈バイパスに関しては、スタンダード以上の医療を自信を持って提供できます。同じ心臓血管外科でも、血管内のステント治療であれば、専門の先生が担当していますし、左心耳閉鎖という胸腔鏡下で行うMICS手術の一つですが、これは比較的新しい手技で、また他の医師が手術を担当しています。
このように手術や手技、専門ごとにそれぞれがトップを目指すようなチームでありたいですし、目指しています。

地方の地域密着型の病院では、ジェネラルな診療に特化した研修ができます。一方で当院では、スペシャリストの外科医から指導を受ける、専門性の高さに特化した研修ができるのではないでしょうか。国内トップレベルの施設で、専門性の高い外科医から学ぶ、そうした研修方法がフィットする先生もいると思います。そういった人たちに、ぜひ当院に来て学んでほしいと思います。

04 手術や手技だけでなく、アウトプットも重視

私の信念として、手術の数が多ければ多いほど、その経験を発信し学会発表や論文といった形で世に出して、アウトプットすることが大切だと考えています。文武両道に、手術や手技だけでなく、学術的な側面も兼ね備えているべきだと思っています。
若い頃に論文を書くトレーニングをしていないと、その先もずっと学術スキルを習得することは出来ないでしょう。大人になってすぐに出来るようになるものではないので、リテラシーと同じですね。
実験研究は大学でないと難しいですが、臨床研究においては、手術の症例数以上に行っていると思います。珍しい症例を世の中にシェアすることで、目に見えない患者さんを救うことができると信じています。

05 マッチするのはチームプレイヤーのような医師

当院の心臓血管外科には、真面目にコツコツ努力できる性格の人が向いているのではないかと思います。実直で、思慮分別のある人です。心臓血管外科はさまざまな部署に迷惑をかけてしまう科ですので、チームワークも必要です。
診療科内はもちろん、事務の方や、手術室やICUの看護師、麻酔科など、多職種と連携をとることが必要で、人間関係のバランスも大事です。自分一人が突き進んでしまうような方よりは、チームプレイヤーのような医師が当院に向いているのではないかと思います。

06 同世代の医師同士が教育し合う環境

教育面では、できる限り若い世代の医師の価値観に合わせて、指導を行うことを心がけています。
私たちの世代は、怒られることが愛情だとされてきた世代です。しかし私たちの世代と今の世代とでは、怒られることに対するとらえ方が異なりますし、怒る教育方法というマインドセットは持っていないでしょう。
そのため、上級医が下の医師に一方的に指導を行うのではなく、若い医師同士がお互いに教え合うような環境を整えています。
たとえば3年目の医師が1年目の医師を教え、2年目の医師も1年目をサポートするような形です。彼ら自身で勉強会を行ったり、若い医師同士でローテーションで教育係を担ってもらうことで、ともに学び合いながら成長していくことができます。このような指導ができるのも、当院のような大きな施設の魅力の一つと思います。
実践の手術や、心臓外科は他の診療科とも連携が必要なんだよ、といったメッセージを伝えるのは私たちの役目です。しかし教育のすべてを私たちが担当するのではなく、チーム全体で協力して成長できる環境を大切にしています。

07 当院の心臓血管外科が最後の砦でありたい

今後、心臓の手術は時代とともに減少する傾向にあると考えています。循環器内科の領域、具体的にはカテーテル治療などが増えていくからです。しかし、心臓手術や心臓外科が完全に無くなるわけではなく、より専門性の高い施設で、限定的に診療を行うように、変化していくのではないかと考えています。
一方で、心臓外科領域で増えていくものもあると考えています。大動脈分野は心臓外科の範囲ですが、これは増えていくだろうと予想しています。血管外科に対しても、患者さんは増加するだろうと思います。
高度な外科的治療はより専門性の高い病院で行うようになり、一方で一般病院では、大動脈、あるいは大動脈以外の血管の患者さんが多くを占めるような体制になっていくのではないかと想像しています。
千葉西総合病院の心臓血管外科は、日本全国から心臓外科が消えない限り、最後まで残っている心臓外科でありたいですし、それを目指しています。当院の心臓血管外科が最後の砦となるように、日々努力しています。

08 心臓血管外科専門医を目指す先生にメッセージ

私は、3年目から大阪の国立循環器病センターに勤務しておりました。彼の施設は非常に大規模で、心臓外科医を目指す意欲のある同期や先輩方が多く存在し、それが私の原点となっています。
その仲間たちとは今でも連絡を取り合っていますし、レジデントを終えた後もお互いに影響を与え合いながら、働く場所は異なりますがずっと励まし合う関係です。
お互いの成長を支え合う仲間と、自分に合った病院を見つけてほしいと願っています。

副院長/心臓血管外科部長 中村 喜次

出身:愛媛県

経歴: 1996年4月 愛媛大学病院 第2外科 研修医
1997年4月 愛媛県立中央病院 外科 研修医
1998年4月 国立循環器病センター 心臓血管外科 レジデント
2001年6月 愛媛大学病院 第2外科 医員
2003年4月 NTT東日本関東病院 心臓血管外科 スタッフ医師
2010年4月 NTT東日本関東病院 心臓血管外科 医長
2010年11月 ウェスタンオンタリオ大学病院 心臓外科 フェロー
2012年12月 イムス葛飾ハートセンター 心臓血管外科 医長
2013年12月 千葉西総合病院 心臓血管外科 部長
2022年1月 東京女子医科大学 心臓血管外科 准教授(兼任)
2022年4月 千葉西総合病院 副院長